トトロ木

 中央本線四方津駅。この駅から西、大月・甲府方面を見ると、一風変わった風景画を楽しめる。のどかな山村風風景の真ん中にポンッ、としている2本の木。私はこの2本の木を称して、トトロ木と言っている。世界の宮崎駿の名作トトロの耳に似ているからだ。

 その場に行ってみるとそこは犬嶋大明神という神社。祭神は、大己貴命・火須勢理・少彦名命・天照御神・月読尊といろいろ出ている。ウィキペディアを調べてみる。さしずめ、大地の神、炎の神、知の神、太陽の神、月の神、といったところだろうか。上野原町誌を見てみると困ったことに書物で違うようだ。共通しているのは大己貴命・少彦名命で、この二人は大地の神とそのブレーンということなので、どこに暮らそうと住まわさせてもらえていることへの感謝すべき神様だろう。かつてこのあたりには遺跡が発見された。そういったところにある神社である。神様(自然)への感謝はあったことだろう。しかし、今その場所へ行ってみても遺跡らしきものは何もない。こういったものは、しっかりと保存してもらいたいものだ。

慶応4年 大己貴命・少彦名命・火須勢理・少彦名命
大正14年 大己貴命・少彦名命
昭和47年 大己貴命・少彦名命・天照御神・月読尊
 さて、ここで見たいのは神様ではない。トトロ木だ。先ずこの木は杉。高さはかなりあるが測れない。というのも悔しいので、何とか工夫してみた。根元から天辺までがデジカメにちょうど入るところまで離れて写す。次にデジカメを横にして、適当なものを写す。たとえば柵のようなものだ。画面の端から端まではトトロ木の高さと同じになるので、写されたものの長さを測る。このやり方で、トトロ木の高さはざっと28mとなった。28mの高さの杉の木が2本、トトロの耳のように立っているわけだ。しかし28mは高すぎるように思う。やはりこの測り方には、無理がありそうだ。そもそも距離を測るときに歩幅で測っていたのでは大雑把だ。ということで別のやり方を試みる。

少し離れて、手を伸ばし、ものさしで木の高さを測る。45cm。続いて、トトロ木までの距離をメジャーで測る。24m。これから計算で求める。要はデジカメ測定と同じだが、カメラという中でどう処理しているかわからない(レンズの湾曲など)パラメーターを使うのではなく、直接求めるわけだ。見かけの高さ(ものさし45cm)、手の長さ60cm、木までの距離24m。トトロ木の高さをXとして、X:45cm=24m:60cmからXを求めればよいことになる。トトロ木は18mとなった。これはかなり妥当な数字だ。
 
 次に樹齢を測定を試みる。木に穴を開けたりというのは素人の私にはできない。都合の良いことに、トトロ木の根元は道に向かって横に伸びていたところがあったらしく、切られており、年輪があらわになっている。この横伸びの年輪の数を数えたら185本あった。半径は34cm。木の円周を測ると、4m18cmなので、半径は約66.6cmになる。木の皮の厚さを浮き上がりも含め5cmとすると、年輪の数は、346本となり、樹齢も同じということになる。この数字は妥当なのだろうか。ちょっと大きすぎるように感じられる。346年で18mの高さは低い様にも感じられる。なんでもそうだが、そこそこ成長するとスピードは鈍化する。つまりほとんど成長していなくても年数は重ねていることになる。日当たりや土壌の栄養もあるだろう。あれこれ考えられることはあるのだが、結局、トトロ木の樹齢を素人が測ろうというのは難しいのだろうか。

 そこでこの神社がいつできたかということを見てみる。石灯篭についている年号は、安永九年とか、延享二年とかある。これが、創建年ということはないだろうが、少なくともこれ以前ということになる。それぞれ1780年と1745年になる。古い方をとってみよう。2008年からさか上ると、263年前である。年輪からの推定340年よりは石灯篭からの推定263年の方が妥当な気がする。元々木が生えていたところに神社を作り、周りの木は切られても神社だけは切られないのであって、神社ができてから杉を植えたということではないと思う。木の成長などを考慮すると300年前後といったところだろうか。


 トトロ木は2本あるが、片方だけを測定してみた。もう片方がどのくらいかはわからないが、見掛けが同じ高さなので、とりあえず同じとしておけばいい。

 駅からトトロの耳ように見える樹齢300年近い2本の木は甲州街道郡内の名物だと思う。